振動パルスの切削理論です。

無痛切削法の解析

振動切削理論による無痛切削法の解析および力学的麻酔
 
1)歯の無痛切削法の解析
 
永久歯と乳歯の構成およびその慣用切削方法(Conventional Cutting)を図2-1a、b)に示す。歯は、歯槽骨に対してばねに相当する歯根膜を介して位置している。この歯を図示のようにして切削すると、歯槽骨に対して弾性振動する。そこで、工作物―工具振動系を、歯―工具振動系のようにモデル化して歯の無痛切削法を解析する。
 エナメル質および象牙質を切削するときの疼痛は、質量Mの歯を支持する歯根膜のダッシュポットC1およびばねK1による力あるいは熱による変形量の受容器G1による検出量に比例する。エナメル質から象牙質に移る瞬間の切削時の疼痛は、これに加えて、象牙質細管内歯液の微小質量mのトームス線維と象牙芽細胞および線維芽細胞を支持する歯髄のダッシュポットC2およびばねK2による力あるいは熱による変形量の受容器G2による検出量に比例するとして考える(ばね定数K、粘性減衰係数C、検出量G)
 慣用切削におけるダイヤモンドバーの切削力は回転速度に比例して減少する。そのときの切削力波形は近似して、
        P(t)= Pmean + p sin ωt
で表される。このダイヤモンドバーを現在使用している毎分30~50万回転から毎分100~200~1000万回転へと超高速化すると、切削力の角振動数ωは歯の角固有振動数ωnに対して、ω>ωnとなって歯の変位Xは、
        X = Pmean/K1
 上式のように動的挙動がなくなる上にPmeanの価値が減少して変位量Xが激減する。すなわち、患者の疼痛を激減させ、また、歯科医に与える切削抵抗感をなくし、歯の切削時の疼痛激減の期待に一挙に応えることができる。しかし、この方面における現在の製造理論と技術では約毎分40万~50万回転が限界である。
 そこで、隈部のパルス切削力波形による振動切削に注目して見かけ上の高速化を考える。このパルス切削力波形とすることによって、歯を振動切削したときの歯の動的変位Xはそのパルス切削力の高さP、作用時間tc、周期T(=1/f)とし、ω(=2πf)≫ωnとすると、
        x=tc/T・P/k・・・・・(1)
また、(1)式は、
        kx=tc/T・P・・・・・・(2)
 上式のように、パルス切削力波形とすることによって、歯に作用する切削力 kxを、各周期のパルス切削力Pが慣用切削力と同一であるとしても、そのtc/Tに激減させることができ、疼痛を激減させる効果をもたらすことができる。このパルス切削力Pは、切削条件を同一とする慣用切削の切削力に比べて低い。したがって、歯の変位を極微小化させることができる。
 このパルス切削力波形の利用は、同時に切削熱もパルス状に作用させることになるので、熱による歯髄および歯質への影響も激減して歯の生活保存と無痛切削を可能とする唯一の方法であると解析される。
 
2歯―工具振動系および疼痛伝達系のモデル図とエイクレスカッティング理論とその切削方法
 
 弾性振動しやすい歯を周期の早いパルス切削力波形で切削することによって慣用切削では成し得ない微小な静的変位とするが、この微小静的変位さえも疼痛感として脳は感受する。次に、脳がこれすらも感知しなくなるような新しい切削方法について考える。
 図2-2a、bは、その新しい切削方法などを解析しやすいように我々が創案した、永久歯および乳歯―工具振動系と疼痛伝達系のモデル図である。エイクレスカッティング理論および切削方法を説明しやすいようになっている。
 図2-2 aにおいて、抵抗線ひずみゲージが受容器、増幅器が知覚神経、記録計が感覚中枢に相当する。そして、記録波形の高さの大小が脳の疼痛感の大小として考える。歯槽骨に対して歯根膜のばねK1とダッシュポットC1で支えたセメント質と、エナメル質で囲まれた歯を、エンジン・タービンで切削したときのばねK1の変位を、ひずみゲージG1で検出して増幅器で増幅し、記録計で記録して、その記録波形の高さの大小が疼痛に比例すると考える。これを歯根膜からのBライン伝達系による疼痛と考える。一方、歯槽骨に対して歯髄液内の歯髄のばねK2とダッシュポットC2で支えた象牙芽細胞、線維芽細胞と象牙質細管歯液内のトームス線維をエンジン・タービンで切削したときのばねK2の変位ひずみゲージG2で検出して増幅器で増幅し、記録計で記録して、その記録波形の高さの大小が疼痛感に比例すると考える。
 これを歯髄からのAライン伝達系による疼痛と考える。このモデル図によって、歯を固定してもエナメル質から象牙質に移る、その境界層の付近で疼痛感を与える現象や象牙質を切削する際の疼痛は、歯髄液の圧迫によるばねK2の伸縮によるものとして考えることができる。歯髄炎は歯髄液の炎症によるばねK2の熱膨張によるもので、また歯根膜炎は歯根膜の炎症によるばねK1の熱膨張によるものとして考えることができる。このような患歯を切削するとさらに切削時の力学的、熱的なばねK1、K2の伸縮が加算されて疼痛が激増することが振動工学的に説明できるようになる。(したっがって、エイクレス使用により疼痛を感じさせることなく髄腔を開放することが可能になった。)
 図2-2bは、乳歯に対するモデル図で、歯は頭の部分ができて顎の中で栄養を受け育てられ、次に根が育ち、その後歯槽骨が形成される。それがまた、正常であれば育てられた歯は自然吸収を続けていく。この解剖学的形態や生物学的な特殊性から、伝達系の考え方は永久歯とは異なるものと考えられる。エナメル質と象牙質で囲まれた乳歯と永久歯の2個のカプセルを考え、機能が低下、あるいは消滅していく歯髄の振動系と受容器は点線で表し、歯槽骨に対して歯根膜のばねK1とダッシュポットC1で支えたセメント質とエナメル質で囲まれた歯を工具で切削したときのばねK1の変位を、ひずみゲージG1で検出して増幅器で増幅し、記録計で記録して、その記録波形の高さの大小が疼痛に比例するものと考えられる。
 乳歯に保護された永久歯には機能が不完全あるいは構造が不完全な歯根膜の振動系と受容器は点線で表し、その機能を発揮している歯髄のばねK2とダッシュポットC2にかかわる振動系と受容器を実線で表し、乳歯の下の永久歯に対しては、このAライン伝達系から主として伝達されると考える。この図によって、乳歯の切削に際しての疼痛は歯根膜の動的挙動によるもので、加齢によって異なってくるものと考えられるが乳歯治療にあたっての乳歯の大きな動的挙動は歯根膜の機能が不完全なために、不安定な永久歯にも大きな動的挙動が伝わり、薬物および加圧力の負担は発育期の永久歯に悪影響を与える等の説明が振動工学的に容易にできるようになる。
 以上のように、歯―工具振動系におけるばね定数の異なるばねの挙動を感度と周波数特性の異なる受容器で検出し、これを周波数特性の異なる増幅器で増幅し、さらにこれを記録計の記録紙上に記録させ、その波形の高さに比例して疼痛となると
考える。

この両モデル図を基にしてなお残る疼痛の除去について
 
 歯の切削時の疼痛軽減法として、1歯の固定、2切削力の軽減、3、麻酔等がある。この1と2は、エイクレスを使用することにより解決できる。
 
3、麻酔について
 歯科には従来から化学的方法による薬物麻酔注射と笑気麻酔が使用されている。この科学的方法の麻酔はモデル図で示した疼痛伝達系におけるリード線を切断して、情報の伝達機能を停止させ記録用ペンの動きを 0 にして波形の高さを0とすることであると考える。これは数多くのリード線を切断するために、その麻酔には時間を要し、その修復にも長時間を必要とし、頬を押さえて帰るのをしばしば見かける。
 この化学的麻酔に対して、機械工学的物理的手法によって歯のばね、受容器、増幅器および、記録計の固有振動数よりも少なくとも3倍以上の高い振動数で歯を強制振動させることによって、化学的麻酔と同様に、記録用ペンの動きの波形の高さを0とすることができ、歯の振動姿態そのものが記録計測できなくなることが振動工学的に解析される。すなわち、歯が振動していることを脳は感知できなくなる。また、振動を停止すれば、瞬時にもとの状態に回復する特徴をもつこともわかる。以上のように工学的に解析して、聴覚の伝達系に周波数特性があって超音波域の高い振動数の音声が聴こえないように、歯の動的挙動による痛覚の伝達系にも周波数特性があって、低い振動数による振動姿態は感知できるが、超音波域の高い振動数で振動する歯の振動姿態は感知できなくなり、痛覚がなくなる特性があることを発見した。この新しい麻酔方法を振動工学的に解析して創案し、疼痛伝達系の周波数特性を利用したこの物理的手法を、力学的麻酔と我々は名づける。
 この力学的麻酔効果が発揮できるように、歯を振動数f、振幅aで超音波振動させ、その歯の振動姿態が変化したり、停止しないような最小の切削力で切削治療する方法が歯の無痛切削方法である。その具体的方法としては、歯を振動数f、振幅aで超音波振動させ、これを超音波振動する切削工具で切削治療することが理想的な歯の切削方法である。一方、超音波振動している歯を、現在のエアータービンによって高速回転するダイヤモンドバーをそのまま使用して、切込み、送りを微小化したソフトタッチの軽切削を行っても、歯の超音波振動姿態を乱すことなく力学的麻酔効果が発揮でき、無痛切削が実現している。歯の固有振動数は歯根膜のばね定数およびその質量から概算して300~3000Hzの間にある。この約3倍の超音波域の振動数としては20KHz以上の振動数となる。この振動数が高いほど振動系の長さは短くなり、軽量化され、超音波振動に関する理論と技術の粋を集めて設計試作を繰り返し行った結果、約60KHzが最適である。そこで、振動数f=60KHz、振幅a=0.6~4чmで超音波振動するホーン先端を患歯にあて、患歯を超音波振動させることにした。
 このようにして切削するときの永久歯および乳歯と工具振動系および疼痛伝達系のモデル図を図2-3a、bに示す。
 図が示すように、記録計のペンの動きはなくなって0点を示し、脳は疼痛感および切削時の頭全体に響くガタガタという厭な不快感を感じなくなるもと解析された。この切削方法を「エイクレスカッティング」と名づける。
〔参考〕歯に対する痛みの刺激の種類
  1. 圧迫などの機械的刺激
  2. 温・冷などの熱刺激
  3. 高張・低張溶液の浸透圧刺激
  4. 乾燥による水分蒸発
  5. 酸、アルコール、アルカリなどの化学的刺激
  6. 歯髄内圧の上昇
  7. 歯の接触、咬合圧
  8. 異種金属の接触電位(ガルバニー電流)
  9. 咬合性外傷および歯の早期接触

 これらの痛みの因子のすべては、象牙細管中の歯液やトームス線維中の細胞質を歯髄方向かまたはエナメル質方向に移動させる。この液体移動が象牙芽細胞の電位を変化させるため、そこに絡みついている歯髄Nを刺激して痛覚が発生する。 象牙細管中の圧変化はエナメル象牙質境界を削るとき最も大きくて液体移動も大きい。象牙質まで削ると細管が開放され圧が抜けて液体移動が止まるので痛みは緩和される。窩洞形成には1m?u当たり3万本もある象牙細管中の液体移動をできるだけ最小限にとどめる工夫をすることが患者に苦痛を与えず、また象牙芽細胞と歯髄を保護するコツがある。これがエイクレスを使用することで解決する。
麻酔なしだと歯質の削除を必要最小限にとどめ、形成中観察のために窩洞を水で洗いエアーを吹きつけて冷却乾燥させないですむ。これは象牙細管内に象牙芽細胞の原形質や核を吸引する作用があり、痛覚発生の原因となり、また二次象牙質の形成を妨げるからである。窩洞形成時の蒸発、乾燥、冷却、浸透圧の陰圧すべて象牙芽細胞核を吸引する。したがって、後になってしみる、痛いと訴えてくることがある。
3)痛みの一般的性質・痛みの定義
 
 国際疼痛学会の用語委員会(IASP Subcommittee on Taxonomy 1986)は痛みを“組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか:このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験”、と定義した。組織が傷害されたときに生ずる感覚・情動体験はまぎれもない痛みであるが、身体のどこにも原因が見当たらない感覚・情動体験であっても、これを痛みと認めるという。
 
エイクレス研究会第1回年次大会(1993年、東京)において、滋賀医科大学教授、横田敏勝先生の「痛みのメカニズム」の講義より抜粋
 
 痛みには感覚と情動がある。情動には痛みに伴う不快感・不安・苦しみ・恐怖などがある。痛みを感じて患者が受診する動機となる。痛みの感覚は視覚や聴覚と異なり大きな特徴がある。視覚と聴覚の場合は外界に感覚の対象があり、他人と感覚の対象を共有できる。そのため、お互いが美しいこと、心地よいことの合意を得ることができる。痛覚はその対象が自分自身である。他人と痛みの体験を分かち合うことは原理的に不可能である。ただ、我々は他人の痛みを理解しようと努力することである。痛みは主観的な意識内容で、中身は多種多様、複雑怪奇である。原因によって分類すると、
 
  1. 生体に外部から刺激が加わって生じる痛み。多くの場合組織を侵害するが、長時間続すると組織を侵害する可能性をもった侵害刺激によって生じる。
  2. 組織に病変または異常があって生じる痛み。虫垂炎の痛みや歯痛がその例。
  3. 神経系の異常による痛み。モーターバイクの事故で腕神経が脊髄から引き抜かれたために生じる痛みとか、三叉神経痛などがこれに属する。
  4. 精神的な原因によって身体に異常が発生して生じる痛み。精神的ストレスによって生じる痛みとか、胃痛などがこれに含まれる。
  5. 身体的な異常がない心因性の痛み。
 
上記の痛みのうち、外から刺激が加わって生じる痛みや、組織に病変、あるいは異常があって生じる痛みは、いずれも痛覚受容器が刺激されて生じる。この受容器に有効に作用して痛みを生じる刺激は一般に組織を侵害するか、あるいはその可能性をもった侵害刺激(noxious stimul)である。したっがて、これら2種類の痛みを侵害受容性疼痛(nociceptive pain)と呼ぶことができる。これに対して神経系の異常によって生じる痛みには痛覚受容器が関与しない。
 
 
「痛みの記憶」より
 受容器がとらえた刺激は末梢神経から脊髄を経て、脳に伝えられる。「しかも、痛みの刺激が脊髄に達すると、そこの組織が変化して、痛みが記憶される。」と、名古屋大学名誉教授(神経生理学)の熊澤考朗先生。鈴木太病院長(麻酔科)は「痛みを感じている時間が長いほど、その記憶が体内に強く残り、その後も痛みに悩まされることになる。」と話している。
 
大阪大学名誉教授の生理学者河村洋二郎先生のお話
 疼痛というものは複雑怪奇なもので、不思議な現象があり、未知の要素が非常に多く本体はまだ解明されていない。そして、それが不変にして私たちを不安・恐怖に陥れる。そのために、宗教・薬物に頼る。脳では、痛み・恐怖が一定以上受け入れる機能を持ち合わせないので、切断されて失神する。また、非常な高熱の場合意識不明になるが、これも一つの麻酔効果である。
痛みの説
(1)特殊説:AデルタとC線維という2本の神経があり、鋭痛と鈍痛との伝達をする。
(2)パターン説:どんな感覚でもある一定の閾値を越えると痛みとして感ずる。
(3)ゲートコントロール説:痛覚刺激は脊髄後根から反対側の脊髄視床路を通して中枢へ信号を送っているが脊髄後根に入る神経線維のうち、太い神経を振動させると痛みが軽減する。
太い線維の刺激―気分が良いときには門を閉めるように働く。
細い線維の刺激―反対に不安な気分の落ち着かない状態のときは門が開く。痛みは一層ひどくなる。
 
 この関門を閉じさせようとしたのがエイクレスである。パルスと周波数の特定には長時間を要した。
 
具体的に戦争で負傷した戦士に対して、麻酔等の不足している戦場では、傷を負っている周囲をたたいたりゆすったりすると痛みが感じなくなる、とそのときにメスを入れて手術した従軍医師からのお話を聞いた。
 
痛みを決定する因子のうちには、心理的な面もかなり影響される。
 
歯は感覚器官だ
 東京医科歯科大学の窪田金次郎名誉教授らが、「歯は感覚器官であり、情報器官だ。物を食べるという咀嚼は口だけの運動ではなく、システムとしてとらえるべきだ」という立場から、歯根からの神経が頭を支える首の関節である後頸筋群に直接つながっていることを「咀嚼システムの基礎的研究」の成果の一つの中からつきとめた。 
 毎日なにげなくやっている物を噛んで食べる、という行為は複雑な神経系のおかげで唇や舌などの情報は各神経系を通して、三叉神経節などを経由して脳幹に伝えられ、適切なリズムでモグモグ(咬む・嚙む)が続けられるように咬筋などの筋肉を調整する。
 歯根は歯根膜神経が取り巻いており、この神経が歯ごたえなどの情報を脳に伝える。硬いスプーンなどをカチッと嚙むと思わず口が開く、といった動きも、この神経の働きである。 
 ネズミを使って神経の束を切断する実験をした結果、情報が断たれた神経細胞は次第に死に、ついには脳幹にまで神経の死滅が伝わっていくことが解明された。
その変化を追跡したところ、頭を適当な位置に保つ後頸筋群の神経の終末部にまで及んでいたという。
 歯や唇からの神経を切ったネズミは食べ方が下手になる。人間でもムチ打ち症になると上手に物が食べられなくなるが、その大きな理由は嚙むときの頭の位置がきちんと保てなくなるからだということがはっきりとした。
 このことは歯をむやみに抜いたり、痛いからといって神経をむやみに切ったりするべきでないことを示している。脳全体への情報伝達という意味からは幼児期から良く嚙むということがいかに大事であるかということも明らかになった。
 歯根膜神経、歯髄神経の一部は首の筋肉まで連結され、歯根膜神経は歯ごたえとして脳に伝達されるという。
 
 昭和50年代において校医として、小学校のムシ歯予防デーでの講演の中で、『歯の良い子は、歯の悪い子よりも頭が良いよ。ムシ歯のない子は嚙むことも早いよ。他の動作も早いよ。』などと言って、ひんしゅくをかったりしたが、20年前ではデータや論文が少なかったので、虫歯が頭脳に関係する、動作に関係することなど思いもよらなかったが、このようにはっきりしてくると、ボケ老人の歯と元気でいる老人の残存歯のデータをとってみるとおもしろい。
 幸い私は4世代ぐらいの家族の家庭医として、今も治療室に出ているが、親子の歯の並び、泣き方等、成長の過程があまりにも似ているので、自分の年を重ねていることを忘れてしまうが、こんなこともデータにしている。整理してないのがちょっと辛いが、治療に追い回されている今も楽しい。いつかは、発表することができるだろうと、まだ生き続けている自分がおかしい。
 
こんなこともふまえて、組織への侵害・病変・異常等があったとき、エイクレスの周波数や振動をどこにもっていくか、ウェーバーの法則を借りた。
 
感覚に関するウェーバーの法則(図2-5)
 
この法則に基づいて記録紙上に画かれた波形と感覚の関係を考えてみる。
図2-5
a.波形に対しては疼痛を感知し始める閾値がRであったすると、△Rの識別閾値という誤差値があるので、定常状態のときの0点から、R+△Rからの上方の黒色で塗った波形の部分で脳に疼痛感が発生すると考える。
 
b. 閾値が下がった場合を説明する(閾値が高いということは感受性が鈍くなったということ)。この閾値Rおよび識別閾値△Rの絶対値は不変として考え、原点0~0が原点移動すると考えて、下方に移動して位置するとして考えると、波形のほとんどが黒色部で塗りつぶされ、図aと異なりすべての刺激に対して疼痛反応を現す結果となる。
 
c.ある刺激に対して脳が疼痛感を感受する閾値Rとそれに対しての誤差値として考えれる。識別閾値△Rによる疼痛を感受する限界の波形を示す。
 
d.感覚中枢に相当する記録形状の記録波形の高さがR+△Rよりも低ければ、疼痛感覚は発生しない。
 
e.波形の高さがゼロになれば疼痛感覚は皆無となる。
 
f.波形の形状・高さは同一であるが、教育・体験・情操・暗示などによって閾値R’を高めることができれば、その誤差は△R’も大きくなるのでR’+△R’の高さはますます高くなり、ほとんどの波形はすべてこのR’の範囲に入るので、患者に麻酔することなく治療して疼痛感覚を発生させなくなると考える。